胸がなんとも言えず苦しい。

東洋医学の用語で【心煩(しんはん)】というものがあります。
臨床では「胸がなんとも言えず苦しい」といった表現をされる方が多いです。
この症状、病院の検査では何も出ないことが多く「自律神経の乱れ」と言った感じで安定剤などが処方されるようです。
東洋医学の観点から言えば、火へんが付いている字から推測ができるように、これは【胸郭の熱】によるものと考えます。
胸郭には心臓があります。
心臓は常に動いていて熱産生が多い臓ですので、それを冷やすための機能が存在します。
そこから考えると【心煩】が起こる場合、熱が多いか、冷やす機能が弱っているかのどちらかを考えるわけです。
東洋医学の古書を見ていると、傷寒と呼ばれる病で心煩が起こることがあります。
これは身体を寒気で冷やしたことから発生する病で、心煩は寒気に対抗しようとする身体の熱によって起こります。
また、その過程で発汗しすぎたり、下剤で下したりすることでも引き起こされるとあります。
発汗や下剤が丁度いい加減でなければ、胸の中を冷やすための機能がおかしくなるからです。
一方、このような書き方をしている書籍もあります
「思うようにならぬ所のことを心にもちたるを煩という。もやもやわくわくしてせわしく思うなり」
これは心の中で発生した欲求の火が、発散されずにこもることで起こる熱が原因となっています。
実は両者を比べると、後者が原因で心煩となっている方が断然多いので、安定剤やストレス解消が対処法の一つとなり得ます。
しかし、便秘症で下剤をいつも使っている方や産後で力が抜けている方は前者のパターンなので、少し勝手が違います。
いずれも患者さまが自覚している症状は同じようなものなのですが、原因をしっかりと吟味しなければ、アプローチを間違えることになります。