主訴:腰痛
一年ほど前から背中から腰が痛むようになった。特に朝起きるときが顕著で、背中を反らすと痛む。
■東洋医学的診断と治療
腰痛は単なる筋肉のものから、脊椎が関わるもの、内臓からくるものなど様々な原因から起こるものですので、しっかりと弁別して治療を行う必要があります。
今回の症例の男性の場合、まず弦脉と呼ばれる脉が取れました。そして少し脉を深く見てみると脉が弱くなります。これは肝の気が強く張り出して、内側に血が少なくなってきていることを指します。
この脉は右側で特に見られ、脉診の際の薬指があたる部分、下半身を指すあたりが一番細い脉となっています。
次に腹部を診ると、右の脇腹に固い部分があります。これも肝の状態を診る部分で、固くなっているということは、気の停滞が起きている証拠です。
この方の場合、朝起きるときが一番痛みがあって、起きて動いていると徐々に治まるといった特徴がありました。
朝の時間帯は、寝ている状態から身体を動かしていかなければなりません。それを行うのが肝臓で、それには血を必要とします。
東洋医学的に解釈すると、元々身体の筋肉中の血が減っている状態があり、そこに加えて朝起きて動き出すための血を肝臓が使ったために筋肉の血がより減ってしまったと考えられます。
つまり筋肉中の血を増やしてやれば、この腰痛は治るわけです。
血をつくるには食べた物を胃で消化し、そこから血の元となる栄養をとります。
ですので、治療には胃の経穴である、足三里というツボを先ず使いました。その後、筋に血を集めるため、肝蔵のツボである太衝で、筋に血を持っていきます。また腹部の固い部分にあたる期門(これも肝蔵のツボ)というツボも入れながら治療します。
この方の場合は、3回目の治療で痛みが和らいできて、10回目の治療時には起床時の痛みはとれました。
高年齢にも関わらず脾胃が丈夫なので、早めの改善につながりました。