主訴:腱鞘炎(部位:左手関節の小指側)
一歳の子供の抱っこを繰り返していたら、左手首の小指側が痛むようになってきた。患部は少し腫れており、熱感がある。
その他:育児のため疲れている。尿量、回数ともに少なめ。
■東洋医学的診断と治療
使い過ぎによる腱鞘炎は母指が多いですが、元々、経脉を弱らせる原因があったため、小指側の腱鞘炎を起こした症例です。
この症例の脉のポイントは左手の脉にありました。上半身の状態をしめす場所に緩滑という脉が出ています。
緩滑というのは湿熱が停滞していることを指すものです。つまり左手首のところに停滞しているのは湿熱だということになります。
また、腹部を診ると下腹部の張りが見られ、押さえると痛みがあります。ここは小腸、膀胱の気が集まるところで、ここにも熱があります。
この部分に熱があると、尿量が減少するのですが、問診してみるとその通りでした。水分の排泄がうまくいってないので、湿熱が生じていたことが、ここでわかりました。
背部を診察してみると、臀部の骨盤上部にやや腫れが見られます。ここでも膀胱、小腸の熱があることがわかります。
治療は膀胱の熱による水分循環の障害から発生した湿熱が、手の小指側を流れる小腸の経脉に停滞したという見立てで行いました。
下腹部の関元というツボに鍼をして、尿量を増やし、水分を循環させます。また膀胱の裏にあたる腎蔵のツボを用い、熱を鎮めます。
また、患部である小腸の経脉の後谿というツボに鍼をし、陽気を動かします。
鍼の他に、できるだけ尿意があればすぐにトイレに行くことや、塩辛いものの摂り過ぎを心がけてもらいました。
最初は一時的に痛みが治まる程度だったのが、6回目には痛み、腫れともに治まり、抱っこも普通にできるようになりました。熱がとれてきたため、疲れにくい状態に変化しました。