主訴:右膝痛・右下肢後面の痛み
12月中旬ごろ、歩道を渡ろうと少し走った時に急に痛みが走る。
膝は曲げ伸ばしができず、下肢の後面の筋肉もつっぱった感じがして、余計に動かしづらい。
痛みは寒いところで長時間座っている時などに悪化する傾向がある。
また、痛み以外にも、下腿の重だるさやむくみがある。
■東洋医学的診断と鍼灸治療
この方の右脈には、通常よりもやや引きつった弦脈が出ていました。
弦脈は気の流れが滞っている場合に出やすい脈であり、これが右膝と下肢の痛みを表わしています。
さらに右脈の流れは、少し皮膚面より深い部分を流れていて、停滞のある部位が奥にあることとを示します。
この方の痛みは寒い時に悪化する傾向があります。
この場合、冷えによる痛みであることが多いのですが、患部を触るとすごく熱感があります。
右脈の引きつった弦脈は寒気によって気が停滞したことを表わすものなのです。
そして、熱感が強いのは、元々の体質として膝に熱をためていたと思われるのです。
なぜならば、左脈を診ると水を管轄する腎臓の部分が弱く、逆に身体の熱を管轄する心臓の部分が強くなっていたからです。
腹診においても、みぞおちの心下のところに熱感があり、身体全体としても熱を溜めていたことがうかがえるのです。
また、問診において痛みの出る以前から、膝や足がむくみやすいとのことでしたので、ここでも熱の停滞が起こっていたことが分かります。
以上から、腎臓‐心臓のアンバランスから熱を溜めこんでいた身体に、寒気が侵入し、特に右下腿に強い気滞を起こしたと判断し鍼灸治療を行いました。
このような痛みの場合熱感があるからと冷やしてしまうと悪化します。
ですので、施術は右膝の曲泉というツボにお灸をしました。そして腎臓を助けるために同じく膝のところにある陰陵泉というツボ、心の熱を冷ますのにみぞおちのツボなどを使っていきました。
施術を続けて行くと、まず曲げ伸ばしがしやすくなりました。そして痛み自体も引いていき、階段も昇ったり降りたりできるようになりました。
今では、寒いところで長時間座っても痛みの再発はないようです。