主訴:嗄声(声がでなくなった)・咳嗽・偏頭痛
以前から体調を崩すと必ず咳がひどくなる。今回は咳と共に声がかすれてほとんど出なくなってしまった。
普段から左側の肩こりや頭痛が起こりやすく、全身の疲れがある。
■東洋医学的診断と鍼灸治療
この方の脈では、特徴的な部分が二つあります。
いずれも右の脈に出ていたのですが、先ず右脈の肺の様子をうかがう部位の流れが内側に閉じ、やや硬くなっているということが挙げられます。
内側に閉じるということは、その部分がキューっと引き締められていると解釈できます。
そして右脈には、脾臓の働きをうかがう部分もあり、そこが同じくやや硬い脈で、さらに細くなっています。
脾臓は血を作り出す場所なのですが、そこの働きが弱り、それができなくなっていることを示します。
この二つの所見がある場合、多くは肝臓の気が引き締まる方向に働き過ぎ、それが肺に影響しているという状況が多いのです。
そこで、肝臓に関わるツボを確認してみると他よりも反応が強くでていましたので、そのことからも肝臓の関与がわかります。
さらに、左の脈を見ると右脈よりも大きくなっていて、上記の状態から起こる熱が左に多く停滞していることになります。
これが左の肩こり、頭痛を起こしているようです。
以上から、脾臓の働きが弱まったことで、肝臓が引き締まる方向に働き過ぎ、肺及び気管、声帯部分の収斂が強くなったことによる症状と判断し鍼灸治療を行いました。
治療は肺などの収斂を広げるために、親指の先にある少商(しょうしょう)というツボ、脾臓の働きを助ける脾兪(ひゆ)というツボなどを用いていきました。
施術を続けていると、数回ほどで声は元通りになりました。
また、肩も軽くなって、疲労も減ったということです。
疲労が溜まると時々咳が続くことがありますが、その都度同様の鍼灸治療で治まっています。
あと、右手の指や腕、肘などに軽いアトピーがあったのですが、それも同時にキレイになりました。
これは、肺と皮膚につながりがあるため起こったことです。