主訴:左母指~手関節の腱鞘炎・右下腹部の張り
2月の中ごろから左手首の母指側に痛みが生じる。物を持ったり、ねじったりした時に痛みがある。
最近では草むしりをしている時などに痛みが悪化する。
朝方に手のこわばりがあったり、寝ている間に自発痛がある時もある。
また時々右の下腹部が張るのが気になる。
■東洋医学的診断と鍼灸治療
この方の脈には、患部である左側の脈と右側の脈にそれぞれ特徴的なものがありました。
まず先に右側の脈ですが、皮膚表面からは少し沈んだ部位で、堅く弦脈という脈になっていました。
少し沈んでいるというのは、気の流れが深めの場所にあるということ、そこで気の停滞があるということです。
この沈んだ弦脈というのは、肝臓への水の供給が減って、収斂の気が強くなる時に現れます。この収斂の姿が右下腹部の張りです。
そして、次に左の脈ですが、脈診をする際の一番手首側、上半身の部位の脈が、締まった状態で堅くなっています。
脈が締まっているのは、気の停滞が強い証拠です。実際に患部を触ってみると気の停滞のために、熱を持っているのがわかります。
問診における朝方の手のこわばりや、手をよく使った時に悪化する痛みは、疲労によって津液(水分)が減少することが症状に影響していることを示します。
つまり、肝臓への水供給が減って、相対的に熱を持っているということがわかります。
発症時期が2月という事ですので、上記の理由で発生した熱が、冬の寒気によって停滞させられたというケースも考えられるでしょう。
以上から、肝臓への水供給が減少し、そこから相対的な熱が多くなってしまうことで起きた症状ということで鍼灸治療を行いました。
施術は、肝臓への水供給を増やす、曲泉というツボ、腹部にある大巨というツボ。また患部からやや指先に上がったところにあり、気の停滞を動かす合谷というツボを用いました。
初回施術後にはやや痛みの減少がみられ、1ヶ月後には痛みはほぼ消失。
手のこわばりも減少して、手を使うようなことをしても痛みはでないようになっています。