主訴:産後うつ・パニック障害
出産後一ヶ月くらいしてからうつ症状が出だす。投薬にて落ち着き一旦お薬もなくなるが一年前くらいから再び飲んでいる。
現在は時折パニック症状(動悸、あぶら汗、息苦しさ)が出るようになってきた。
月経時に血の気が引くような貧血症状があり、肩首のこり、めまいや耳鳴りも起こる。
■東洋医学的診断と鍼灸治療
この方の右脈は、深さが中位から浮位くらいにあり、脈の表面はやや堅いものの少し押さえると空虚になるというものでした。
このような脈はネギを触ったような脈ということでコウ(くさかんむりに孔)脈と名づけられており、主に身体の血が少なくなっていることを示します。
血が少なくなったら、脈も細くなって力がなくなるのかと思うかもしれませんが、血の減少により気が表や上方に偏るということが起こりえます。
コウ脈はそのような時に出る脈なのです。
問診で話を伺うと、忙しくしている時や、頭をよく使っているときに症状が出やすく、血の消耗が症状発現と関わっていることからも、脈診から得た情報と一致します。
背部に目を移すと右上半身のこりが強く逆に右腰あたりが他とくらべて凹みが大きく見えます。
これは上方に気が偏っていることで、下方に気がめぐらないことからそうなります。
以上から、出産の出血による体内の血虚から、気が上方に偏ってしまい起こった症状と判断し、鍼灸治療を行いました。
治療は胃腸の働きを高め血を生産する足三里というツボや上方へと偏った気をおろす百会というツボなどを用いました。
施術翌日には、気が降りたように感じたということです。
その後も同様の観点から治療を進め、月経中(=血の減少)にやや肩こりが出たものの、薬を飲む回数も減ってきており、体感的にも調子がいいと感じておられるようです。