主訴:胸痛(掴まれるような感覚)
4~5年前から左胸~脇~背中にかけてキューっと掴まれるような痛みが出るようになる。
検査では問題なく、痛みがない時でも違和感が常にある。しんどい時には身体のだるさや息苦しさもある。
その他、食欲が落ちやすく、食後に軟便になることがある。また、何もしていない時に汗が出てくることがある。
■東洋医学的診断と鍼灸治療
この方の場合、まず左脈に特徴がありました。肘から手首へ流れてくる脈が手首の手前で細くなり内側へ曲がっています。
ここは丁度、上半身にあたる部分で、そこが細くなっているのは、身体を温める陽気の異常をしめしています。
さらに左脈を見ていくと、少し強く押さえた時に、弱い脈になります。
少し押さえた時は身体の内側を診ますのでそこに気血が少なく弱っていることがわかります。
その弱さは腎臓と膀胱を調べる位置で顕著になっていました。
腹診や背中の診察においては、表面にじわっと汗をかく、自汗というものがありました。
これは、身体の表側を守る衛気が弱っていることで起こるものです。
また腹診では臍より下側の皮膚の色が黒ずんでいます。これは腎臓が弱っていることを指し脈診の所見と一致します。
問診上における軟便傾向や食欲不振を考えると、脾胃に問題もあり、現に脾の経絡にあるツボの反応もあります。
また、寒い時に症状が出やすい事もわかりました。
以上の所見から腎臓の弱りから胃腸機能も落ちてしまい、身体を守る衛気が減少したことで外界の気があたって起こる胸痛と判断し鍼灸治療を行いました。
治療には左上半身の気を調えるための後谿というツボやおへその下にある関元というツボなどを用いました。。
初回施術後、尿量が増え、身体にじんましんのようなものが出たと言うことです。
2回目にも同様の変化があり、同時に胸の状態は半分くらいにまで改善しました。
これは、身体の表側に近いところにある水の流れが変化したことで起こったものです。衛気の働きの改善と見ます。
現在も治療を続けていますが、胸痛の出る頻度や程度はかなり減ってきており、また起こったとしてもすぐに戻るといった状態にまでなっています。